クリスマスの佐敦は、ハロウィンレベルの大騒ぎだった。
道行く人たちはギャルでなくともだいたいの人がテーマパークで買うそれのようなかぶりものをしている。例えば恰幅のいいマダムがミニーちゃんのようなどでかいリボンを頭頂につけているかと思えば、カップルは二人してぴかぴか光るトナカイのカチューシャをつけている。そんなかんじの25日だった。
日本ではイブが本番的だけど、香港では原点に忠実に25日が本番。ホテルのテレビでは朝からアメリカのメガチャーチのミサを中継していた。メガチャーチというのは私の理解では「北米の保守層が通う教会」といったかんじで、日曜の朝からイケメン神父がエンタメ性の高いミサをやっている。海外に行くとつい観てしまうコンテンツなのだけれど、さすがにクリスマスだけあって気合いの入ったミサだった(※私は特に信者とかではない)。
クリスマスイブのお話はこちら。
【香港で最も短気な食堂「澳洲牛奶公司」のいま】
そんなクリスマスの朝は大好きなAustralia Dairy Company (澳洲牛奶公司)でサンドイッチを食べた。
ここはSCMP(現地の英語新聞)に「店員が短気なことで有名な」という枕詞とともに掲載された食堂。フロアは全員腕っぷしの強そうな男たち。レジのおばさんはもっと強面だ。しかもなぜか全員ギラギラ系のロレックスをしている。コロナより前、デモ騒動以前の観光客満載の香港ではここは常に行列の人気店だったので、彼らはその行列をさばくのに常にキレまくっていた。だけど前回デモの頃に行ったときはスカスカ状態だったため、男たちは大変ほがらかで、私の撮影にもピースサインで応じてくれた。
…それから2年半。
店はあの頃よりも混んでいたけれど、待たずに入れた。澳洲牛奶公司の男たちの短気度は混雑ぶりと比例する。この日は微妙に空いていたので、まだそんなに怖くなかった。と、そこまで無愛想が常態化しているのに、どうしてここに人は並ぶのか。
それは、この店がおいしいから!!!
私が好きなのは「チーズと卵焼きのサンドイッチ」。分厚い食パンなので、できればパンは軽くトーストしてもらうのがいい。パンも、オムレツも、チーズもおいしい。塩加減もちょうどいい。ああ、おなかがすいてきた。
アルミのカップはダブルウォール(二層構造)になっていて、マスターお手製のあつあつミルクティーが注がれていても、「あちっ」となることがない。そしてカップを持ち上げるとき、同じアルミのソーサーの上をティースプーンが滑り落ちる。それを見たホールの店員は、すかさずスプーンをなおしに飛んで来てくれたりする。短気に見えて(短気だけど)細やかなサービスの行き届いた店なのである。
【DAY2のPCR検査の予約問題】
PCRはWEBサイト(いまはもうない)から予約をしていった。
予約は一言でいうとめんどい。初めて香港に来る人は絶対困ると思う。予約はしなくてもよかったみたいだけど(予約すれ、というようなアナウンスはなく、WEBにいったら予約できる仕様になっていた…というだけ)、どれだけ混んでいるのかわからなかったから念のため予約した。
予約フォームは広東語か普通語か英語。トリッキーなのは、滞在している地区(District)を選ぶ項目があるので自分の滞在するホテルがどの地区にあたるのか知っておく必要がある。例えば今回は佐敦なので、Yau Chim Mong District。油麻地の油、尖沙咀の尖、旺角の旺の頭文字をあわせてこの辺をそう呼ぶのだけど、いやいや外国人絶対知らないから。私はたまたま新聞とかで知っていたけど、英語で書かれると一瞬わからない。さらにわからないとしても聞く人がいない!
それは今回のコロナ対策すべてに言えることだけど、流れ作業ゆえに全貌を知っている人はあんまりいないから。しかも毎日ルールは変わるので総領事館も知らないとかも日常茶飯事。
【DAY2のPCR検査に行ってみた】
検査会場は拍子抜けするほど空いていた。
もちろんのこと、あっという間に終わる。今回は鼻式だったような気がする。それも覚えてないくらい、クリスマスの空は晴れ渡って、世の中はホリデーで、人々は平和に見えた。
そのPCRの結果は「明日の朝までに出る」とのことだった。1回目もすぐだったからすぐ来るものだと思っていたけど、翌朝、メールをチェックしてみると…
結果はまだ来てなかった。
ホテルのコンシェルジュに相談したら「最近混んでるらしいから、遅れてるんじゃないですか」とのことだったけど、その翌日もそのまた翌々日も結果来なかった。
そして数日後、そのままPCR検査システム自体が消滅…!!!
予想の斜め上、はるか上をいく香港。現場では生きた心地がしなかったけど、いま考えてみるとひたすらエキサイティングな数日間でした。
続く。