現代美術家、杉本博司さんが手掛けたアートファウンデーション「江之浦測候所」の後編です。
前回の記事はこちら。
相模湾に面した広い敷地で小田原の景色や空気を感じることができる「江之浦測候所」ですが、前回紹介した建物と並ぶ見どころは、やっぱり小田原の温暖な気候を楽しむ散歩コース。
小田原の気候風土を感じる敷地内散歩。
現代的な建築物の裾野に、海を望む斜面が広がっています。
この時はちょうど菜の花の時期で、一面菜の花畑!
お天気にも恵まれて贅沢でしたがそれぞれの季節の楽しみ方があると思うので、いつ行っても楽しいと思います。
あとけっこうロングコースで歩きます。真面目に回ろうとすると一時間はとっておきたい。しかもアップダウンが激しいので若い人は若いうちに行くか、それ以外の人はスニーカーで行ってください。
敷地内には見どころが点在しています。
とりあえず斜面を順路に沿って一周。
途中、小屋や茶室、竹林、みかん畑など人間が作ったものはもちろん、葉ずれの音や小鳥の声など色々が楽しませてくれるので歩いていても飽きません。
途中寄ってみた竹林の小屋。
…の天窓。あ〜いいお天気。
小屋では敷地内で育てた柑橘を売っていました。私はレモンを購入。
お金は貯金箱に入れる仕掛けですが、それもちょっと面白いことになっているので行ってみて確かめてください。
この後の道ではオレンジやレモンを片手に歩いている人が多かった。エコバッグ持っていくとよかったかも。オレンジ抱えながら歩くっていうのも楽しいんですけどね。
あと前回紹介したギャラリーの下にはこんな秘密の?通路も。
中に入ってみます。
どんどん進むと光が見えてきて…トンネルの終わりかと思いきや
歩いていくと小さな広場になっていて、そこにはガラスの井戸みたいなものが。これが天井にぽっかりあいた窓に乱反射してきらきら光っていたようでした。
そしてその先には相模湾が切り取られたように存在していました。
絵になるなあと思ったけど、ここで写真を撮ると天気によっても季節によっても二度と同じ写真は生まれないんですよね…写真も自然も掴みどころがなく奥が深い。
ちなみにここ冬至の日のある時間帯には、まっすぐ光が差し込んでくるらしい。すご!
「江の浦測候所」、こんな人におすすめです。
現代アートに興味のある人、日帰りで相模湾の自然を触れて、気分転換したい人にはもちろん行ってみていただきたいのですが…とにかくカップル率高いです。
そういう目で見てみると、理想的な日帰りデートスポットですよね(にっこり)。
一筋縄ではいかない建築物やアートの数々を語らうなかでお互いの感性を知ることができる反面、ここまで車か電車で来て、自然の中をもくもくと歩くというのは相当話が続く相手とでないと難しいぞ…と思ったりしたのでした。
余計なお世話だ!
ギャラリーから見下ろしても誰も見えない。
これは前回も言及したけれど古代の人口密度を再現したものだそうで、おかげで全然人に会わない。景色を見たいけど結局人を見て帰ってきました、みたいなことが起こらない。それはコロナより前からそういう体制なのですが、結果的にいまの時代に合っていますよね。
そして帰りも定期的に根府川駅行きのバスが出ているので、それに乗って帰ります。
小田原からはロマンスカー。ですが、ロマンスカーまでちょっと時間があったので、駅前の喫茶店で時間調整。この喫茶店がまた泣かせる…!
小田原駅前の古き良き喫茶店「豆の樹」。
なんとなくオーラに惹かれて入ったのですが、もう名前からしていい。
サイフォンコーヒー。それもまた懐かしい響き。子供の頃、親に連れられて箱根に行った時、こういう文化的な喫茶店に入ったっけ。と思い出し、一杯いただくことに。
店内。
なんかこういう肩のこらない西洋絵画が懐かしくていいですね。
ローランサンとか、そういう「おなじみの絵画をそこまでこだわらずに飾ってます感」がいい。いままでアートという超おこだわりの世界に浸っていたので、肩の力の抜けた空間がしみました。
で、サイフォンコーヒー。これもまた懐かしい。
シュガーポットも、一人一人違うカップ&ソーサも、東京にない牧歌的な雰囲気もすべてが味わい深い。来ている地元の人たちもまたよくて、昔の同級生同士で集まってる女性たちとか、恋人同士とか、ゆっくり語らいたい人が来る店というかんじ。
向かい席が地元のカップルだったんですけど、こんなところでデートできるなんて小田原市民はうつくしいなと。混んでるコーヒーショップとこういう喫茶店では、恋人たちの会話の質、つまりQOC(Quality of Conversation いま作った言葉です)も絶対変わると思う。絶対言葉とか仕草もていねいになるよね…。
なーんてまた勝手な妄想にふけって、あっという間にロマンスカーの時間になってしまったのでした。
あー楽しかった。
また来ますね、小田原さん。
ブログ名にぴったりな記事はなかなか書けないご時世ですが。
おいしいものに心躍らせ、見たことのない景色をきょろきょろして、その刺激でちょっとだけ自分を更新する。自分が好奇心をもって行動すれば、そんな香港旅行みたいな冒険はどこででも体験可能なんじゃないか。最近はそう思い始めています。
あ、最後に。
これまでの小田原シリーズはこちらから〜。