バンヤンツリー クアラルンプール宿泊記。後半は、夜のこと、翌朝のできごとなどである。バンヤンツリーは2024年から日本にも続々オープンするそうなので、予習がわりに読んでいただければと思う。
前編はこちら。ちょっと前編から時間が空いてしまったので、こちらは復習として読んでもらえるとうれしい。
【4. 地上50階のバスタイムを堪能する】
部屋のことを話すときにこの話を書けばよかったのだが、すっかり忘れていた。この部屋のハイライト的存在が、クアラルンプールの街を見下ろすバスルーム。
どうですかこのビュー。
そして楕円形ボウル型バスタブ。汁気の多いパスタを入れる器のようなこのタイプのバスタブが、最近の高級ホテルの流行りだが、私には残念ながらこれが合わない。東京でもよく見かけるが、観るたびに「ああ…」となってしまう。
というのも深すぎて、床に丸みがあるため、落ち着いて腰を下ろすことができないのである。あるいは身長190cmくらいあれば大丈夫かもしれないが、私のようなミニ人間はバスタブの内側に背を預けてリラックスしようと思うと、丸い底面につるーんと滑り、完全にお湯に沈んでしまうのである。あと20年したら命とりになるタイプのバスタブである。
かといって頭をへりに固定しようとすると、へりが角ばっているので後頭部がめちゃくちゃ痛い。バスピローが欲しかった。切実に。
【5. 曜日ごとのアロマを楽しめるナイトタイム】
写真がぶれているが一枚しかないので許してほしい。
バンヤンツリーのいいところは、アジアンなアロマをいつでも身近に楽しめるところである。ベッドサイドに曜日がわりのインセンスがあり、今日は何の香りなのかと調べられるリーフレットもある。私は旅先にアロマを持ち歩くようなおしゃぴーではないので、こうしてホテルに備えていただけるとちゃっかりおしゃれにリラックスできてありがたい。
このアロマ、気に入ったらおそらく買えるはずだ。バンヤンツリーは備品を何でも買える系の(パンフが部屋にある)ホテルなので、浴衣やスリッパもおしゃれでしっかりしている。ただ浴衣はミニ丈の大胆リゾート柄、しかも前で結ぶタイプだったので、女性が着るとルノアールの描いた東洋趣味の女性みたいになり「GEISHA」感が半端ない。
【6.昼のムルデカ118、夜のパビリオン。KLのビルビューを堪能】
クアラルンプールでは大方の場合、部屋からの眺めはどんな高級ホテルでも、シティビューである。高層ビルもあれば、この土地特有の赤土がむき出しの空き地もある。そんなクアラルンプールのシティビュー。
ハーバービューか、シティビューか。香港ではホテルライフのQOLは景色に左右される部分も多分にあるけれど、ここではどこまで行ってもシティビュー、かつ人口密度の関係上、向かいのビルとお見合い…!みたいなアクシデントもあまりないので、高いホテルでも安いホテルでも景色に差はあまりない。
この部屋からは左端に見切れるパビリオン、そして奥には地上118階の新高層ビル「ムルデカ118」がぐーんとそびえている。アジアのビルオタク垂涎の(かどうかは知らないが)ムルデカ118。このとき(8月)もうほとんど出来上がっていたが竣工となれば世界で第二位の高層ビルになる。高さ 678.9 m。ガラケーかトランシーバーのアンテナみたいな尖塔も入れて、である。一位はもちろんドバイのブルジュ・カリファである。「二位じゃだめなんですか」という言葉が一時期話題になったのを思い出した。
これが竣工したからといって、やっぱりクアラルンプールのアイコンはペトロナスツインタワーのままであるだろうと思われる。建築はデザインも大事である。
そして夜はブキッ・ビンタンの象徴である超高級ショッピングモール「パビリオン」の看板が主役である。ブキッは丘、ビンタンは星という意味の言葉であるようなので、私はブキッ・ビンタンを星ヶ丘と呼んでいる。その昔はここから星が見えたんだろうと思いつつ、現代のブキッ・ビンタンの夜空はこのパビリオンが一人勝ちの趣きである。
大都市なのにのんびり。いつか発展すると言われながら、いつ来てもそう言われ続けている「俺らのびしろしかないわ」な国。それがクアラルンプールの良さだと私は思う。一方でこんなにのどかであっても、GDP成長率は日本より上であることは付け加えておきたい(伸びは鈍化していると言われているがまだ上だ)。
【6. ルーフトップ朝食で朝から気分を上げる】
お酒を飲む向きにはルーフトップバー「VERTIGO」がおすすめだが、お酒を飲まない人にはこのルーフトップ朝食が大きな楽しみだろう。
ただここもまた…南国の宿命か、小さい虫天国だった。食べながら、景色を楽しみながら、自撮りする女子を見ながら。ここでも私はほぼ無意識に殺生を重ねていた。
はっきり言うのもなんだが、味のクオリティは期待できない。
プレゼンは素敵なので、口に運ぶ際に勝手に脳は「おいしいもの」を迎え入れる体勢になっているのだが何しろ味が残念なので、咀嚼する瞬間、脳がバグる。
ムスリム使用なので、ハムがターキーだったこともあるかもしれない。豚→鳥への置き換えはけっこう無理があると思う私である。たいしたコストにはならないと思うので、信教の自由として選ばせてもらえるとうれしい。
【7. ちょっとしたトラブルも楽しむ!?】
虫を殺生し続けた洗面所。ここの下水があやしい。
というわけでプールが極寒、虫と共生しなくてはならない(共生できなかったが)などの問題はあるものの、おおらかな気持ちで楽しめばいい体験ができるんじゃないかと思う。コロニアルなフローリングの部屋、VERTIGOの夜景、天空の中でのオープンエア朝食…。とにかくアイコニックで、イベントフルなホテルである。
何より日本に上陸した際に、「私泊まったことあるんだけどさー」とドヤって話題にできる特典付きである。せっかくの経験はあますことなく楽しまなくちゃもったいない。
そんなことを思いながら、次の宿泊先への荷造りにとりかかるとしよう。
つづく