【なぜGrabが使えないのか会議】
盛りだくさんのマレーシア初日はまだ終わってなかった。そう、GrabにBANされて空港から車を手配することができなかったのだ。
成田からクアラルンプール国際空港までの様子はこちら↓
空港内の鼎泰豊(ハラルバージョンのチキン小籠包)を頬張りながら作戦を立てる。
自分のができないとなれば、次は現地SIMを入れた海外テザリング用のスマホ(2年半ぶり起動)を使ってみるべきだろう。…というわけで早速その7年落ちのAndroidにGrabアプリをダウンロードして配車を試みたが…アプリのSMS認証ができなかった。なぜできなかったのか? それは
圧倒的にスマホが古いから。
おそらく理由はこれに尽きる。アプリの進化に端末がついていけてないのだ。まさか最後の香港旅から2年半もどこも行かないとは思っていなかったので……ちょっとなんか悪い意味で感慨深くて言葉がない。
じゃあUber入れればいいじゃん、と思って調べてみたら、マレーシアのUberはとっくにGrabが吸収合併していたようだった。Grabすごいじゃーん、という感想しかない。
初日の宿はKLCCのトレーダーズホテル。
私の愛するシャングリ・ラホテル系列のビジネスホテル的存在だ。ここから車に乗る気まんまんでいたのだが、あきらめて電車KL Expressに乗って、とりあえず市内まで行くことにした。
【空港と市内を結ぶKL Expressとは?】
マレーシアは紫大好き国家。国の色とかなのだろうか。
香港でいうところのエアポートエクスプレスとほぼ同じような特徴を持つ、空港と市内を結ぶ快速電車である。値段は香港のそれ以上に高い(一人2500円ほど)。観光客の好みそうな公共の施設など、マレーシアは現地人価格と観光客価格をあからさまに分ける。マレーシアに限ったことではないが、外国人からいただく気まんまんである。そういうときは心を無にして払うことにしている。
しかもいまは空港と市内をスピーディに結ぶ快速が運休中(らしい)というわけでとろとろ、各駅停車で行く。エアポートエクスプレスを特急だとしたら、こちらはローカル線といったかんじのカジュアル感だ。
途中「プトラジャヤ&サイバージャヤ」という駅に停まるのだが、女性のテンションの高い声で「ぷっとらっじゃや!」と駅名をアナウンスするのがツボって、旅行中ずっと真似していた。疲労困憊で乗ったけれど、なんかのんきな夜のピクニック気分で、結果的にはゴキゲンな列車旅だった。
【KLセントラルの駅は貴重なコンビニ立ち寄りスポット】
KL セントラルに到着!
地方都市っぽい。それが第一印象だった。
あと駅構内にコンビニがある。水やらなんやら調達したい場合、ここを逃してはいけない。
KLは車社会だ。都市部では道幅はおそろしく広く、横断歩道も少ない。ホテルを地図で予習「道渡ったとこにコンビニあるじゃん」と思っても、その「道渡ったとこ」が徒歩10分くらいかかったりする。
今回のホテルの周りにはコンビニがないので、ビールと水はここで調達しておく。残りHPがゼロに等しかったけれど、コンビニを見た瞬間ちょっと元気が回復した。コンビニはマレーシアではMynews.comかセブンが多い。ここはMynewsに寄った。水の冷蔵庫はびっくりするほどぬるく、ビールの冷蔵庫は冷凍庫かというくらい冷えていた。逆だったら泣いていたと思う。
【なぜ日本人は車の扉を強く閉めるのか】
そしてここからはタクシーに乗る…しかない。KL エクスプレス→タクシーというオールドスクールなルートをとるのは欧米のバックパッカー的旅行者が多かった。
タクシーは事前にチケットを購入するシステム。受付で行き先を伝えてお金を払い、タクシーに乗る。タクシーの運ちゃんは、ノリだけでやっているようなマレー人の初老男性だった。
「どこから来た?」と言われて「日本だ」というと、30年ほど前の日本の観光情報を並べ立てるようなティピカルな男だった。「日本は何でもExpensiveね」と言われたが、どう考えても日本はいま世界有数の「安い国」だ。「いまはなんでも安いデスヨ…」という私の超最新日本情報は聞いてもらえなかった。
そんな彼だが、別れ際に呆れ顔で言った一言が忘れられない。
「日本人はどうしてドアを強く閉めるんだい?」
実は同じことを「DiDi」(大陸のUber)にも言われた。
「それは昔“半ドア”というものがありまして、バンッと勢いをつけて閉めないと出発できないとかあったんですよ」と伝えたかったが、自分自身“半ドア”がなんなのかよくわかっていなかったのと疲れていたので「I see.」としか答えなかった。
【ホテル到着&アザーン回避作戦】
中年の久しぶりの海外旅行の疲れは一泊では取れないだろうと予測して、ここは二泊予約してあった。その後はノープランだ。シャングリ・ラ系列ということでいえばここから徒歩15分くらいのところに本家シャングリ・ラがあるが、ホテルの部屋と周辺環境という意味では、私はこちらのトレーダーズホテルが好きだ。
ただ一つ、最後に泊まったときから私を悩ませる問題がある。
近隣にでっかいモスクができたのである。
モスクといえば、アザーン。イスラム教の礼拝の時刻を告げる歌みたいなものを放送するのである。それの初回が…朝の5時!!! 前回はそれで毎朝起こされた。今回、数日前から早寝早起きモードに調整していたのはその対策でもあったのだけれど、5時はさすがについていけない。今回は絶対にモスクビューの部屋をあてがわれるわけにはいかない。
そう思い、レセプションで熱弁をふるう。予約時に備考欄に書いていたけれど、そういったものが先回りして反映されたためしがない。
受付のお姉さんは、ムスリムだった。
そんな人に対して「アザーンが無理なんですけど」というのは失礼かと思い、おそるおそる告げたのだが…遠回しすぎてか伝わらなかった。生まれてからずっと聴いている放送の何が問題なのか、わからないということかもしれない。
そこで上席のお兄さんにもう一度同じことを言う。今度はわかってもらえたけれど彼が言うには「アザーンが聞こえない部屋にするとダウングレードすることになるがいいか?」とのことだった。
全然それでいいです。
というわけで上層階のツインタワービューから、絶賛工事中シティビュー14階へ…。
窓からの眺め…。実は翌日以降は結構楽しめた。
それからは買ってきたカールスバーグ(2本600円。酒に厳しい国である)を飲みながら、マレーシアドラマを鑑賞した。
マレーシアドラマはけっこう見ごたえがある、と私はつねづね思っている。
今回たまたま見ることができたのは、食品店を営む裕福なムスリム系マレー男子がヒンドゥー美女と恋に落ちてしまうカルチャーギャップ系。マサラムービー的くどいカメラワークもあり(ヒロインが振り向く瞬間を何度もスローモーションにしたりとか)、続きが気になった。幸運にもこれが初回だったらしい。
本来の部屋から見えるはずだった眺め。アザーンには変えられない。
Grab開通は明日に持ち越しになったけれど、物語のゆくえも、旅のゆくえも楽しみになってきた初日の夜だった。
つづく。